【実話】幼い頃の不思議体験《廃屋から女の子の声》

不思議な体験を聞きましたので私がかわりにお話していこうと思います。

怖くないのでご安心ください。

S君

たしか6歳か7歳の頃の話です。

その頃うちは、父親の会社の社宅に家族4人で住んでいました。

造りは平屋で、トイレは汲み取り式、勝手口は木の扉
庭にいちごやトマトを育てられる程度の畑があり
僕はその庭で虫を捕まえたりして遊んでいました。

近所には子供が多く、学校も一緒、遊ぶのも一緒、銭湯も一緒
隣に住んでいる子は同い年で、私の初恋の人でした。

例えるなら「ALWAYS 三丁目の夕日」みたいな雰囲気ですかね。
古き良き時代の日本ですね。

うちから2ブロック離れたところに
S君という一つ年下の男の子が住んでいて
家族構成は確かお父さんお母さんそして
お姉さん、真ん中がS君、妹の三人兄妹、五人家族でした。

私はお姉さんと妹とは話をしたことはありません。
そしてS君も時々学校や家の近くの公園で見かける程度で
遊んだことはなかったと思います。

そのS君が少し面白い子だったのですが
ある日銭湯でお漏らししてしまい、その日銭湯を休みにさせてしまった。
という事がありました。

事件的な事は、その件しか覚えていないのですが
皆が噂するちょっと変わった子でした。

古い社宅を取り壊し新しい住宅街にする計画

社宅はわりと大きな敷地におそらく100世帯くらいは住んでいたと思うのですが
ある時期から引っ越しが多くなり、まず隣の家族が引っ越していきました。

そしてまたひと家族、またひと家族と次々に引っ越していきます。

そしてS君の家族もいつの間にか引っ越していたのですが
家はすでに廃墟みたいになっていて
庭に雑草とか色んな植物が僕たち子供の背丈ぐらい伸びていて
その植物は玄関を覆いつくしていました。

不思議な女の子の声

そんなある日の夕方
誰もいなくなった雑草だらけのS君の家の前に
数人の子供達が集まってキャーキャーと騒いで遊んでいました。

何事だろうと近付いていったら

1人が『ねぇねぇ、聞いてて』と私に話しかけてきて
そのS君の家に向かって『おーい』と
ヤッホーみたいに声をかけました。

そしたら誰もいないはずの廃墟みたいな家の中から『ああー』と
女の子の声で返事がありました。

『誰もいないのに返事するんだよ』

と言ってまた

『ねえー』と声をかける

するとまた

『ああー』と返ってくる。

『おーい』

『ああー』

『こんにちはー』

『ああー』

『やっほー』

『ああー』

『今日は何日ですかー?』

『ああー』

『怖くない?なんで?何言ってもああーって返ってくる』 

と言って何度も何度も繰り返していました。
そっか、キャーキャー言ってたのは遊んでるのではなくて、怖くて悲鳴を上げていたんだ。

私も怖かったのですが、不思議なこの光景をしばらくただ眺めていました。

今おぼろげな記憶を辿ってみても完全に廃墟でした。
中に人がいるなんて、そんな雰囲気じゃない廃屋。
もしかして、心霊的な声だったのでしょうか。

謎のままついにうちも引っ越し

その後うちの家族も引っ越したのですが
少し大きくなって、その辺りに行ってみたら
社宅は完全に取り壊されていて道も舗装され
きれいな住宅街になっていました。

そして時は流れて40年後

時は流れて40年後
私は何度も転職を繰り返したのち、ある会社に就職しました。
その会社は福祉関係の会社で支援が必要な方々をサポートする仕事内容でした。

ぼくが所属したチームの担当は7人でしたが本当に色々な方がいました。
何のきっかけもなく突然消えて行方不明になる方。
暴力的になる方。

中でも印象に残っているのが、Tさんという25歳の男性でその男性は生まれつき言葉が喋れません。

会話はこんな感じです。

『おはようございます。』

『ああー』

『朝ごはん食べましたか?』

『ああー』

『今日は天気がいいから散歩行きましょうか』

『ああー』

返事だけではなく、喜怒哀楽を表現する言葉もすべて『ああー』でした。

私は記憶がよみがえり、はっとしました。

もしかして、廃墟になったS君の家のあの『ああー』って

会話したことはなかったけれど、S君のお姉さんか妹のどちらかがそういった支援が必要な方で

学校帰りに新しい家が分からなくなってしまい

元々住んでいたあの雑草だらけの廃屋に上がり込んでしまったのかもしれない。

そして外で遊んでいる子供たちの声に無邪気に反応したのかも、と思うようになりました。

ずっと幽霊の声と思っていたのですが、大人になってTさんと出会い僕の中ではなんとなく腑に落ちた瞬間でした。

あの声すごく透き通った声だったんですよね。
とても神秘的で不思議なお話でした。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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